FAQ

各教科等の指導において論理や思考といった知的活動を行う際,次のような言語活動を充実するか


  ○事実等を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝えること
  ○事実等を解釈するとともに,自分の考えをもつこと,さらにそれを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること

 これらの指導に当たっての留意点を例示する。

ア 事実等を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝えること
(ⅰ) 事実等を正確に理解すること
  事実や他者の意見を正確に理解するためには,主観にとらわれず,事実等と意見や考えなどを明確に区別することが必要になる。
  特に,複雑な事実等については,解釈のための視点がないと理解することは難しい。そこで,事実等を正確に理解するために,事実等の内容について,例えば5W1H(いつ,どこで,誰が,なにを,なぜ,どのように)など,どのような点に着目して理解するか,視点をもつことが必要である。そうした視点に応じて事実等の対象から情報を適切に取り出すことによって,事実等を正確に理解することができるようになる。
  事実等を正確に理解するための指導を行う際には,
(1)生徒が理解するに当たって,視点をもたせるようにすること,
(2)設定した視点に応じて対象から情報を適切に取り出すようにすることなどに留意することが大切である。

(ⅱ) 他者に的確に分かりやすく伝えること
  理解した事実等を他者に的確に分かりやすく伝えるためには,自分や聞き手・読み手の目的や意図に照らして事実等を整理し,明確に伝えることが必要である。
  そのため,的確に分かりやすく伝えるように指導をする際には,
(1)自分や伝える相手の目的や意図を捉えるようにすること,
(2)目的や意図に応じて事実等を整理できるようにすること,
(3)構成や表現を工夫しながら伝えられるようにすることに留意することが大切である。     


イ 事実等を解釈し説明するとともに,自分の考えをもつこと,さらに互いの考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
(ⅰ)事実等を解釈し,説明することにより自分の考えを深めること
  事実等を正確に理解した後,それを自分の知識や経験と結び付けて解釈することによって自分の考えをもつこと,さらにその自分の考えについて,理由や立場を明確にして説明することなどを通じて,自分の考えを深めていくことが重要である。
  また,他者の考えを認識しつつ自分の考えについて前提条件やその適用範囲などを振り返るとともに,他者の考えと比較,分類,関連付けなどを行うことで,多様な観点からその妥当性や信頼性を吟味し,考えを深めること,すなわちクリティカル・シンキングも大切になる。
  そのため,自分の考えを深める指導を行う際には,
(1)事実等を知識や経験と結び付けて解釈し,自分の考えをもたせるようにすること,
(2)自分の考えについて,探究的態度をもって意見と根拠,原因と結果などの関係を意識し,説明する際にはそれを明確に示すこと,
(3)自分の考えと他者の考えの違いを捉え,それらの妥当性や信頼性を吟味したり,異なる視点から検討したりして振り返るようにすることなどに留意することが大切である。

(ⅱ)考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
  考えを伝え合うことは,自分の考えになかったものを受け入れて自らの考えに生かしたり,相手の立場や考えを考慮し,尊重したりすることで自らの考えや集団の考えを発展させることにつながる。
  そのためには,集団の中で生徒がそれぞれの考えを表明し合うことを通じて,いろいろなものの見方や考えがあることに気付き,それぞれの考えの根拠や前提条件の違い,特徴などを捉えることが重要である。また,それぞれの考えの違いや特徴を確認し合いながら,それらの考えを整理することを通じて,更に自分や集団の考えを振り返り,考えを深めることが重要である。
  このため,考えを伝え合う指導をする際は,(ⅰ)にあるように,自分の考えや意見をもち,深めることを前提としつつ,
(1)考えを伝え合う中でいろいろな考えや意見があることに気付くことができるようにすること,
(2)それらの考えには根拠や前提条件に違いや特徴があることに気付くことができるようにすること,
(3)それぞれの考えの異同を整理して,更に自分の考えや集団の考えを発展させることができるようにすることなどに留意することが大切である。