現学習指導要領(平成25年度~)
各教科等の指導において論理や思考といった知的活動を行う際,次のような言語活動を充実するか
○事実等を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝えること
○事実等を解釈するとともに,自分の考えをもつこと,さらにそれを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
これらの指導に当たっての留意点を例示する。
ア 事実等を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝えること
(ⅰ) 事実等を正確に理解すること
事実や他者の意見を正確に理解するためには,主観にとらわれず,事実等と意見や考えなどを明確に区別することが必要になる。
特に,複雑な事実等については,解釈のための視点がないと理解することは難しい。そこで,事実等を正確に理解するために,事実等の内容について,例えば5W1H(いつ,どこで,誰が,なにを,なぜ,どのように)など,どのような点に着目して理解するか,視点をもつことが必要である。そうした視点に応じて事実等の対象から情報を適切に取り出すことによって,事実等を正確に理解することができるようになる。
事実等を正確に理解するための指導を行う際には,
(1)生徒が理解するに当たって,視点をもたせるようにすること,
(2)設定した視点に応じて対象から情報を適切に取り出すようにすることなどに留意することが大切である。
(ⅱ) 他者に的確に分かりやすく伝えること
理解した事実等を他者に的確に分かりやすく伝えるためには,自分や聞き手・読み手の目的や意図に照らして事実等を整理し,明確に伝えることが必要である。
そのため,的確に分かりやすく伝えるように指導をする際には,
(1)自分や伝える相手の目的や意図を捉えるようにすること,
(2)目的や意図に応じて事実等を整理できるようにすること,
(3)構成や表現を工夫しながら伝えられるようにすることに留意することが大切である。
イ 事実等を解釈し説明するとともに,自分の考えをもつこと,さらに互いの考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
(ⅰ)事実等を解釈し,説明することにより自分の考えを深めること
事実等を正確に理解した後,それを自分の知識や経験と結び付けて解釈することによって自分の考えをもつこと,さらにその自分の考えについて,理由や立場を明確にして説明することなどを通じて,自分の考えを深めていくことが重要である。
また,他者の考えを認識しつつ自分の考えについて前提条件やその適用範囲などを振り返るとともに,他者の考えと比較,分類,関連付けなどを行うことで,多様な観点からその妥当性や信頼性を吟味し,考えを深めること,すなわちクリティカル・シンキングも大切になる。
そのため,自分の考えを深める指導を行う際には,
(1)事実等を知識や経験と結び付けて解釈し,自分の考えをもたせるようにすること,
(2)自分の考えについて,探究的態度をもって意見と根拠,原因と結果などの関係を意識し,説明する際にはそれを明確に示すこと,
(3)自分の考えと他者の考えの違いを捉え,それらの妥当性や信頼性を吟味したり,異なる視点から検討したりして振り返るようにすることなどに留意することが大切である。
(ⅱ)考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
考えを伝え合うことは,自分の考えになかったものを受け入れて自らの考えに生かしたり,相手の立場や考えを考慮し,尊重したりすることで自らの考えや集団の考えを発展させることにつながる。
そのためには,集団の中で生徒がそれぞれの考えを表明し合うことを通じて,いろいろなものの見方や考えがあることに気付き,それぞれの考えの根拠や前提条件の違い,特徴などを捉えることが重要である。また,それぞれの考えの違いや特徴を確認し合いながら,それらの考えを整理することを通じて,更に自分や集団の考えを振り返り,考えを深めることが重要である。
このため,考えを伝え合う指導をする際は,(ⅰ)にあるように,自分の考えや意見をもち,深めることを前提としつつ,
(1)考えを伝え合う中でいろいろな考えや意見があることに気付くことができるようにすること,
(2)それらの考えには根拠や前提条件に違いや特徴があることに気付くことができるようにすること,
(3)それぞれの考えの異同を整理して,更に自分の考えや集団の考えを発展させることができるようにすることなどに留意することが大切である。
各教科等において,コミュニケーションに関する指導を行う際には?
各教科等において,コミュニケーションに関する指導を行う際には,他者との対話を通して考えを明確にし,自己を表現し,他者を尊重し理解するなど互いの存在についての理解を深めるような言語活動を充実する。
各教科等において,感性や情緒に関する指導を行う際には,体験したことや事象との関わり,人間関係,所属する文化の中で感じたことなどを言葉にしたり,それらの言葉を互いに伝え合ったりするような言語活動を充実する。
ア 互いの存在についての理解を深め,尊重すること
よりよい生活や人間関係を築くためには,自分や他者の思いや考えを共通の目的の下に整理して,互いに理解し合うといったコミュニケーションが重要である。良好なコミュニケーションを図るためには,思いや考えを表現するための語彙を豊かにし,表現力を身に付けることが重要である。また,自分の思いや考えをもちつつそれを相手に伝えるとともに,相手の思いや考えを理解し,尊重しようとすることも大切である。その上で,自分と相手の思いや考えについて,「何が同じ」で「何が異なるか」という視点で整理しながら,相手の話をしっかり聞き取り,受け止めるようにするとともに,納得したり,合意したり,折り合いを付けたりするなど,状況に応じて的確に反応することができるようにすることも大切である。
このため,コミュニケーションに関する指導を行う際には,
(1)語彙を豊かにし,表現力を育むこと,
(2)自分の思いや考えを伝えようとするとともに,相手の思いや考えを理解し尊重できるようにすること,
(3)自分の思いや考えの違いを整理しつつ,相手の話を聞き,受け止めることができるようにすること,
(4)相手の話に対して,状況に応じて的確に反応できるようにすることなどに留意することが大切である。
なお,コミュニケーションについては,主として人間関係の構築等を目的とした活動について整理している。
イ 感じたことを言葉にしたり,それらの言葉を互いに伝え合ったりすること
感性・情緒は,事象との関わりや他者との人間関係,所属する文化などの中で感じたことを言葉にしたり,心のこもった言葉を交わし合ったりすることによって一層育まれていくものである。そのような豊かな感性・情緒を通して,良好な人間関係を築くことにもつながる。
なお,論理と情緒とが対立する問題として捉えられることがあるが,必ずしも適当ではない。物事を直観的に捉えるだけではなく,分析的に捉えることも情緒を豊かにしていく上で有効である。例えば,単に「わぁー,すごい」という言葉だけで感情表現するのではなく,「何が」「どのように」「すばらしい」のかについて,具体的な表現を用いて相互に伝え合うことにより,より細やかな感性・情緒を実感できるようになる。
このようなことから,感性・情緒等に関する指導を行う際,
(1)様々な事象に触れさせたり体験させるようにすること,
(2)感性・情緒に関わる言葉を理解するようにすること,
(3)事象や体験等について,より豊かな表現,より論理的で的確な表現を通して互いに交流するようにすることが大事である。
家庭科において,言語活動の充実を,どのように図ればよいか。
1 知的活動に関することとして,合理的な判断力や創造的思考力,問題解決能力の育成を図るため,生活における様々な事象や科学性を説明する活動や判断が必要な場面を設けて理由や根拠を論述したり,正解が1つに絞れない課題を考える際,最適な解決方法を探究したりする活動を重視すること。
2 他者とのコミュニケーションに関することとして,会話を通して考えを明確にし,自己を
表現し,他者を理解し,他者と意見を共有し,互いの考えを深めることを通して協同的な関
係を築くような活動を重視すること。
3 感性や情緒に関することとして,実践的・体験的な活動を一層重視し,その過程で様々な
語彙の意味を実感を伴って理解させるような学習を重視すること。
教科目標の「人間の生涯にわたる発達」や「主体的に家庭や地域の生活を創造する能力」とは何か
「人間の生涯にわたる発達」とは,人間が生まれてから死ぬまでの間,身体的,精神的に変
化し続け,各ライフステージの課題を達成しつつ発達するという生涯発達の考え方を重視した
ものである。人の一生を「時間軸」としてとらえるとともに,生活の営みに必要な金銭,生活
時間,人間関係などの生活資源や衣食住,保育,消費などの生活活動にかかわる事柄を「空間軸」としてとらえ,各ライフステージの課題と関連付けて理解させることが重要である。
「主体的に家庭や地域の生活を創造する能力」とは,生活に必要な知識と技術の習得を通し
て,ともに支え合う社会の一員として主体的に行動する意思決定能力を身に付け,男女が協力して家庭や地域の生活を創造できるようになることを目指したものである。
共通教科「家庭」の指導計画の作成に当たっての配慮事項は何か。
「家庭基礎」は,原則として,同一年次で履修させる。この科目は基礎的な学習内容で構成される2単位の必履修科目である。また,原則として総授業時数の10分の5以上を実験・実習に配当し,実践的・体験的な学習を通して科目の目標を達成することができるよう配慮しなければならない。したがって,指導の効果を高めるために,同一年次で集中的に履修させる必要がある。
また,「家庭総合」や「生活デザイン」を複数の年次にわたって分割履修させる場合は,原
則として,連続する2か年において履修させる。これらの科目も原則として10分の5以上を実
験・実習に配当し,実践的・体験的な学習を通して科目の目標を達成することができるよう配
慮し,内容の関連性や系統性に留意して指導の効果を高めることが必要である。
なお,実験・実習には,調査・研究,観察・見学,就業体験,乳幼児や高齢者との触れ合い
や交流活動などの学習活動が含まれる。
指導に当たっては,中学校技術・家庭科,公民科及び保健体育科の外に,数学科,理科との関連を図る。
食育の推進に当たっての配慮事項は何か。
食に関する指導は,学校の教育活動全体を通して行われるものであるが,家庭科は,生活全体の中での食生活の営みという視点をもっているので,生徒の日常生活と関連を図り,より実践的に指導することが重要である。特に,生涯を見通した食生活を営む力をはぐくむために,調理実習を通して調理に関する知識と技術を身に付けさせ,実生活への活用につながるよう配慮する必要がある。
実験・実習を行うに当たっての配慮事項は何か。
改訂された指導要領では,「関連する法規等に従い」が追加された。電気,ガスなどの火気,薬品,針,刃物などの安全に配慮した取扱いや,特に,食材,調理器具などの衛生的な管理と取扱いについての指導を徹底し,事故や食中毒等の防止に努めなければならない。
家庭科の目標と,道徳教育はどのように関連しているか。
生活に必要な知識と技術を習得することは,望ましい生活習慣を身に付けるとともに,勤労
の尊さや意義を理解することにつながる。また,家族・家庭の意義を理解させることや主体的
に生活を創造する能力などを育てることは,家族への敬愛の念を深めるとともに,家庭や地域社会の一員としての自覚をもって自分の生き方を考え,生活をよりよくしようとすることにつ
ながる。
専門家庭の改定のねらいは?
専門教科「家庭」は,少子高齢社会の進展やライフスタイルの多様化,食育の推進などの社
会の要請に対応し,衣食住,ヒューマンサービスなどにかかわる生活産業への消費者ニーズの的確な把握や必要なサービス提供等を行う企画力・マネジメント能力を身に付け,生活文化を伝承し創造する人材を育成するなどの観点から改善が図られた。
ア衣食住,保育,家庭看護や介護などヒューマンサービスに関連する産業を生活にかかわる
産業ととらえ,生活産業の各分野で職業人として必要とされる資質や能力を育成する。
イ生活文化の伝承と創造に寄与する能力と態度を育成する。
ウ生活産業を取り巻く諸課題を倫理観をもって解決し,生活の質の向上と社会の発展を図る
能力と態度を育てる。
「生活産業情報」の目的は?
生活産業の各分野で情報及び情報手段を適切に活用する能力の育成を重視する。