現学習指導要領(平成25年度~)
学習指導要領の改訂の基本的な考え方は?
(1)改正教育基本法等を踏まえた学習指導要領改訂
(2)「生きる力」という理念の共有
(3)基礎的・基本的な知識・技能の習得
(4)思考力・判断力・表現力等の育成
(5)確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
(6)学習意欲の向上や学習習慣の確立
(7)豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実
学力の重要な3つの要素は?
(1)基礎的・基本的な知識・技能
(2)知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等
(3)主体的に学習に取り組む態度
思考力・判断力・表現力等を育むためには,どのような学習活動が重要ですか?具体的には?
(1)体験から感じ取ったことを表現する
(例)・日常生活や体験的な学習活動の中で感じ取ったことを言葉や歌,絵,身体などを用いて表現する
(2)事実を正確に理解し伝達する
(例)・身近な動植物の観察や地域の公共施設等の見学の結果を記述・報告する
(3)概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用したりする
(例)・需要,供給などの概念で価格の変動をとらえて生産活動や消費活動に生かす
(例)・衣食住や健康・安全に関する知識を活用して自分の生活を管理する
(4)情報を分析・評価し,論述する
(例)・学習や生活上の課題について,事柄を比較する,分類する,関連付けるなど考えるための技法を活用し,課題を整理する
(例)・文章や資料を読んだ上で,自分の知識や経験に照らし合わせて,自分なりの考えをまとめてA4・1枚(1000字程度)といった所与の条件の中で表現する
(例)・自然事象や社会的事象に関する様々な情報や意見をグラフや図表などから読み取ったり,これらを用いて分かりやすく表現したりする
(例)・自国や他国の歴史・文化・社会などについて調べ,分析したことを論述する
(5)課題について,構想を立て実践し,評価・改善する
(例)・理科の調査研究において,仮説を立てて,観察・実験を行い,その結果を整理し,考察し,まとめ,表現したり改善したりする
(例)・芸術表現やものづくり等において,構想を練り,創作活動を行い,その結果を評価し,工夫・改善する
(6)互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる
(例)・予想や仮説の検証方法を考察する場面で,予想や仮説と検証方法を討論しながら考えを深め合う
(例)・将来の予測に関する問題などにおいて,問答やディベートの形式を用いて議論を深め,より高次の解決策に至る経験をさせる
学習活動の基盤となるものは?
学習活動の基盤となるものは,
数式などを含む広い意味での言語。
いずれの各教科等においても,記録,要約,説明,論述,討論などの言語活動を発達の段階に応じて行うことが重要
高校生としての学習活動にふさわしい言語活動とは?
高等学校教育の共通性と多様性のバランスに配慮しつつ,義務教育段階での学習内容の確実な定着を図り,多様な内容を生徒の実態に応じて様々な方法で学ぶという点から捉える必要がある。高等学校において取り上げる言語活動としては,例えば,次のような点に留意する必要がある。
現代の社会生活で必要とされる実用的な文章を読んで内容を理解し,自分の考えをもって話し合う。
文字,音声,画像などのメディアによって表現された情報を,課題に応じて取捨選択してまとめる。
授業のまとめとして,その時間のポイントなどを説明する。
課題についての自分の考え方を板書し,どのようにすればよりよい考えや表現になるかを考える。
適切な主題を設定し,資料を活用して探究し,考えを論述する。
観察,実験などの結果を分析し解釈して自らの考えを導き出し,表現する。
学習の成果を互いに伝え合ったり,助言し合ったりして,新たな追究に向かう。
自己評価や相互評価を通して,自己の変容を確認する。
共通する家庭科
家庭科においては,学習した知識及び技術を活用して生活に関わる諸問題を解決する能力を育む観点から,実践的・体験的な学習を通して衣食住,家族,保育,消費,環境など家庭生活の様々な事象の原理・原則を科学的に理解する学習活動や,それらに関わる知識と技術を実際の生活上の意思決定や問題解決に活用するなどの学習活動を充実する。
特に,学習した知識と技術を生かして,自己の家庭生活や地域の生活と関連付けて生活上の課題を設定し,解決方法を考え,計画を立てて実践することを通して生活を科学的に探究する方法や問題解決の能力を身に付けさせることを目的とする,「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」を充実する。
○ 合理的な判断力や創造的思考力,問題解決能力の育成を図るため,衣食住などの生活における様々な事象や科学性を説明する活動や判断が必要な場面を設けて理由や根拠を論述したり,正解が一つに絞れない課題を考える際,最適な解決方法を探究したりする学習活動を充実する。
○ 乳幼児との触れ合いや高齢者との交流等を通して自己の考えを明確にし,自己を表現し,他者を理解し,他者と意見を共有し,互いの考えを深めることなどの協同的な関係を築く学習活動を充実する。
○ 衣食住などの生活における様々な事象やものづくりなどに関する実践的・体験的な活動を一層重視し,その過程で様々な語彙の意味を実感を伴って理解させる学習活動を充実する。
専門学科において開設される家庭科
◎主として専門学科において開設される各教科のうち職業に関する各教科
<家庭>
家庭科においては,生活産業への消費者ニーズの的確な把握やサービス提供等を行う企画力・マネジメント能力を身に付け,生活文化を伝承し創造する人材を育成する観点から,衣食住,ヒューマンサービスなどの各分野における基礎的・基本的な知識,技術の定着を重視するとともに,就業体験等,実社会や職業との関わりを通じて,コミュニケーション能力等に根ざした実践力を高める学習活動を充実する。
○ 「課題研究」においては,調査,研究,実験,産業現場等における実習,作品製作等の成果や課題について報告書の作成や発表を行う,文章や資料等を読んだ上で,知識や経験に照らして多面的・多角的に自分の考えをまとめて論述するといった学習活動を充実する。
○ 子どもや高齢者に関する情報を的確に理解したり,自分の考えを適切に伝えたりするなど,生徒が主体的に考え,討議し,発表し合う等互いの考えを深める上で必要なコミュニケーション能力を高める学習活動を充実する。
○ 自分の考えや与えられたイメージを,創意工夫したりアイディアを生かしたりするなど,適切な表現方法により創造的に製作するなどの学習活動を充実する。
国語力は?国語科は?各教科等では?
「国語力」は「すべての教科の基本」と位置付けられていた。
新しい学習指導要領では,言語に関する能力を育成する中核的な存在が国語科。
国語科においては,これらの言語の果たす役割を踏まえて,的確に理解し,論理的に思考し表現する能力,互いの立場や考えを尊重して伝え合う能力を育成することや我が国の言語文化に触れて感性や情緒を育むことが重要。
そのためには,「話すこと・聞くこと」や「書くこと」,「読むこと」に関する基本的な国語の力を定着させたり,言葉の美しさやリズムを体感させたりするとともに,発達の段階に応じて,記録,要約,説明,論述,討論といった言語活動を行う能力を培う必要がある。
国語科以外の各教科等においても,国語科で培った能力を基本に,それぞれの教科等の目標を実現する手立てとして,知的活動(論理や思考)やコミュニケーション,感性・情緒の基盤といった言語の役割を踏まえて,言語活動を充実させる必要がある。
各教科等の指導の留意点
各教科等の指導に当たっては,児童生徒が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を計画的に取り入れるよう工夫することが重要である。
その際,自校や他校においてこれまでに実践された優れた言語活動の指導事例を参照することも有効である。
語彙や表現を豊かにするために適切な教材を取り上げること,教育活動全体を通じた読書活動を推進すること,学校図書館を計画的に利活用すること,学校における言語環境を整備することなどにも留意することが重要である。
従来の「思考・判断」を「思考・判断・表現」と改めた?
各教科の内容等に即して思考・判断したことを,表現する活動と一体的に評価する観点(以下,「思考・判断・表現」とする。)を設定することとし,観点別学習状況の観点については,従来の「思考・判断」を「思考・判断・表現」と改めることとした。そして,この「思考・判断・表現」の観点については,基礎的・基本的な知識・技能を活用しつつ,各教科の内容等に即して思考・判断したことを,説明,論述,討論等といった言語活動等を通じて,思考・判断の過程を含めて評価するものであることに留意する必要があるとしている。
各教科等の指導において論理や思考といった知的活動を行う際,次のような言語活動を充実するか
○事実等を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝えること
○事実等を解釈するとともに,自分の考えをもつこと,さらにそれを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
これらの指導に当たっての留意点を例示する。
ア 事実等を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝えること
(ⅰ) 事実等を正確に理解すること
事実や他者の意見を正確に理解するためには,主観にとらわれず,事実等と意見や考えなどを明確に区別することが必要になる。
特に,複雑な事実等については,解釈のための視点がないと理解することは難しい。そこで,事実等を正確に理解するために,事実等の内容について,例えば5W1H(いつ,どこで,誰が,なにを,なぜ,どのように)など,どのような点に着目して理解するか,視点をもつことが必要である。そうした視点に応じて事実等の対象から情報を適切に取り出すことによって,事実等を正確に理解することができるようになる。
事実等を正確に理解するための指導を行う際には,
(1)生徒が理解するに当たって,視点をもたせるようにすること,
(2)設定した視点に応じて対象から情報を適切に取り出すようにすることなどに留意することが大切である。
(ⅱ) 他者に的確に分かりやすく伝えること
理解した事実等を他者に的確に分かりやすく伝えるためには,自分や聞き手・読み手の目的や意図に照らして事実等を整理し,明確に伝えることが必要である。
そのため,的確に分かりやすく伝えるように指導をする際には,
(1)自分や伝える相手の目的や意図を捉えるようにすること,
(2)目的や意図に応じて事実等を整理できるようにすること,
(3)構成や表現を工夫しながら伝えられるようにすることに留意することが大切である。
イ 事実等を解釈し説明するとともに,自分の考えをもつこと,さらに互いの考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
(ⅰ)事実等を解釈し,説明することにより自分の考えを深めること
事実等を正確に理解した後,それを自分の知識や経験と結び付けて解釈することによって自分の考えをもつこと,さらにその自分の考えについて,理由や立場を明確にして説明することなどを通じて,自分の考えを深めていくことが重要である。
また,他者の考えを認識しつつ自分の考えについて前提条件やその適用範囲などを振り返るとともに,他者の考えと比較,分類,関連付けなどを行うことで,多様な観点からその妥当性や信頼性を吟味し,考えを深めること,すなわちクリティカル・シンキングも大切になる。
そのため,自分の考えを深める指導を行う際には,
(1)事実等を知識や経験と結び付けて解釈し,自分の考えをもたせるようにすること,
(2)自分の考えについて,探究的態度をもって意見と根拠,原因と結果などの関係を意識し,説明する際にはそれを明確に示すこと,
(3)自分の考えと他者の考えの違いを捉え,それらの妥当性や信頼性を吟味したり,異なる視点から検討したりして振り返るようにすることなどに留意することが大切である。
(ⅱ)考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させること
考えを伝え合うことは,自分の考えになかったものを受け入れて自らの考えに生かしたり,相手の立場や考えを考慮し,尊重したりすることで自らの考えや集団の考えを発展させることにつながる。
そのためには,集団の中で生徒がそれぞれの考えを表明し合うことを通じて,いろいろなものの見方や考えがあることに気付き,それぞれの考えの根拠や前提条件の違い,特徴などを捉えることが重要である。また,それぞれの考えの違いや特徴を確認し合いながら,それらの考えを整理することを通じて,更に自分や集団の考えを振り返り,考えを深めることが重要である。
このため,考えを伝え合う指導をする際は,(ⅰ)にあるように,自分の考えや意見をもち,深めることを前提としつつ,
(1)考えを伝え合う中でいろいろな考えや意見があることに気付くことができるようにすること,
(2)それらの考えには根拠や前提条件に違いや特徴があることに気付くことができるようにすること,
(3)それぞれの考えの異同を整理して,更に自分の考えや集団の考えを発展させることができるようにすることなどに留意することが大切である。
各教科等において,コミュニケーションに関する指導を行う際には?
各教科等において,コミュニケーションに関する指導を行う際には,他者との対話を通して考えを明確にし,自己を表現し,他者を尊重し理解するなど互いの存在についての理解を深めるような言語活動を充実する。
各教科等において,感性や情緒に関する指導を行う際には,体験したことや事象との関わり,人間関係,所属する文化の中で感じたことなどを言葉にしたり,それらの言葉を互いに伝え合ったりするような言語活動を充実する。
ア 互いの存在についての理解を深め,尊重すること
よりよい生活や人間関係を築くためには,自分や他者の思いや考えを共通の目的の下に整理して,互いに理解し合うといったコミュニケーションが重要である。良好なコミュニケーションを図るためには,思いや考えを表現するための語彙を豊かにし,表現力を身に付けることが重要である。また,自分の思いや考えをもちつつそれを相手に伝えるとともに,相手の思いや考えを理解し,尊重しようとすることも大切である。その上で,自分と相手の思いや考えについて,「何が同じ」で「何が異なるか」という視点で整理しながら,相手の話をしっかり聞き取り,受け止めるようにするとともに,納得したり,合意したり,折り合いを付けたりするなど,状況に応じて的確に反応することができるようにすることも大切である。
このため,コミュニケーションに関する指導を行う際には,
(1)語彙を豊かにし,表現力を育むこと,
(2)自分の思いや考えを伝えようとするとともに,相手の思いや考えを理解し尊重できるようにすること,
(3)自分の思いや考えの違いを整理しつつ,相手の話を聞き,受け止めることができるようにすること,
(4)相手の話に対して,状況に応じて的確に反応できるようにすることなどに留意することが大切である。
なお,コミュニケーションについては,主として人間関係の構築等を目的とした活動について整理している。
イ 感じたことを言葉にしたり,それらの言葉を互いに伝え合ったりすること
感性・情緒は,事象との関わりや他者との人間関係,所属する文化などの中で感じたことを言葉にしたり,心のこもった言葉を交わし合ったりすることによって一層育まれていくものである。そのような豊かな感性・情緒を通して,良好な人間関係を築くことにもつながる。
なお,論理と情緒とが対立する問題として捉えられることがあるが,必ずしも適当ではない。物事を直観的に捉えるだけではなく,分析的に捉えることも情緒を豊かにしていく上で有効である。例えば,単に「わぁー,すごい」という言葉だけで感情表現するのではなく,「何が」「どのように」「すばらしい」のかについて,具体的な表現を用いて相互に伝え合うことにより,より細やかな感性・情緒を実感できるようになる。
このようなことから,感性・情緒等に関する指導を行う際,
(1)様々な事象に触れさせたり体験させるようにすること,
(2)感性・情緒に関わる言葉を理解するようにすること,
(3)事象や体験等について,より豊かな表現,より論理的で的確な表現を通して互いに交流するようにすることが大事である。
家庭科において,言語活動の充実を,どのように図ればよいか。
1 知的活動に関することとして,合理的な判断力や創造的思考力,問題解決能力の育成を図るため,生活における様々な事象や科学性を説明する活動や判断が必要な場面を設けて理由や根拠を論述したり,正解が1つに絞れない課題を考える際,最適な解決方法を探究したりする活動を重視すること。
2 他者とのコミュニケーションに関することとして,会話を通して考えを明確にし,自己を
表現し,他者を理解し,他者と意見を共有し,互いの考えを深めることを通して協同的な関
係を築くような活動を重視すること。
3 感性や情緒に関することとして,実践的・体験的な活動を一層重視し,その過程で様々な
語彙の意味を実感を伴って理解させるような学習を重視すること。
教科目標の「人間の生涯にわたる発達」や「主体的に家庭や地域の生活を創造する能力」とは何か
「人間の生涯にわたる発達」とは,人間が生まれてから死ぬまでの間,身体的,精神的に変
化し続け,各ライフステージの課題を達成しつつ発達するという生涯発達の考え方を重視した
ものである。人の一生を「時間軸」としてとらえるとともに,生活の営みに必要な金銭,生活
時間,人間関係などの生活資源や衣食住,保育,消費などの生活活動にかかわる事柄を「空間軸」としてとらえ,各ライフステージの課題と関連付けて理解させることが重要である。
「主体的に家庭や地域の生活を創造する能力」とは,生活に必要な知識と技術の習得を通し
て,ともに支え合う社会の一員として主体的に行動する意思決定能力を身に付け,男女が協力して家庭や地域の生活を創造できるようになることを目指したものである。
共通教科「家庭」の指導計画の作成に当たっての配慮事項は何か。
「家庭基礎」は,原則として,同一年次で履修させる。この科目は基礎的な学習内容で構成される2単位の必履修科目である。また,原則として総授業時数の10分の5以上を実験・実習に配当し,実践的・体験的な学習を通して科目の目標を達成することができるよう配慮しなければならない。したがって,指導の効果を高めるために,同一年次で集中的に履修させる必要がある。
また,「家庭総合」や「生活デザイン」を複数の年次にわたって分割履修させる場合は,原
則として,連続する2か年において履修させる。これらの科目も原則として10分の5以上を実
験・実習に配当し,実践的・体験的な学習を通して科目の目標を達成することができるよう配
慮し,内容の関連性や系統性に留意して指導の効果を高めることが必要である。
なお,実験・実習には,調査・研究,観察・見学,就業体験,乳幼児や高齢者との触れ合い
や交流活動などの学習活動が含まれる。
指導に当たっては,中学校技術・家庭科,公民科及び保健体育科の外に,数学科,理科との関連を図る。
食育の推進に当たっての配慮事項は何か。
食に関する指導は,学校の教育活動全体を通して行われるものであるが,家庭科は,生活全体の中での食生活の営みという視点をもっているので,生徒の日常生活と関連を図り,より実践的に指導することが重要である。特に,生涯を見通した食生活を営む力をはぐくむために,調理実習を通して調理に関する知識と技術を身に付けさせ,実生活への活用につながるよう配慮する必要がある。
実験・実習を行うに当たっての配慮事項は何か。
改訂された指導要領では,「関連する法規等に従い」が追加された。電気,ガスなどの火気,薬品,針,刃物などの安全に配慮した取扱いや,特に,食材,調理器具などの衛生的な管理と取扱いについての指導を徹底し,事故や食中毒等の防止に努めなければならない。
家庭科の目標と,道徳教育はどのように関連しているか。
生活に必要な知識と技術を習得することは,望ましい生活習慣を身に付けるとともに,勤労
の尊さや意義を理解することにつながる。また,家族・家庭の意義を理解させることや主体的
に生活を創造する能力などを育てることは,家族への敬愛の念を深めるとともに,家庭や地域社会の一員としての自覚をもって自分の生き方を考え,生活をよりよくしようとすることにつ
ながる。
専門家庭の改定のねらいは?
専門教科「家庭」は,少子高齢社会の進展やライフスタイルの多様化,食育の推進などの社
会の要請に対応し,衣食住,ヒューマンサービスなどにかかわる生活産業への消費者ニーズの的確な把握や必要なサービス提供等を行う企画力・マネジメント能力を身に付け,生活文化を伝承し創造する人材を育成するなどの観点から改善が図られた。
ア衣食住,保育,家庭看護や介護などヒューマンサービスに関連する産業を生活にかかわる
産業ととらえ,生活産業の各分野で職業人として必要とされる資質や能力を育成する。
イ生活文化の伝承と創造に寄与する能力と態度を育成する。
ウ生活産業を取り巻く諸課題を倫理観をもって解決し,生活の質の向上と社会の発展を図る
能力と態度を育てる。
「生活産業情報」の目的は?
生活産業の各分野で情報及び情報手段を適切に活用する能力の育成を重視する。
家庭に関する各学科における教育課程の編成・実施に当たっての配慮事項は何か
1 学科の目標,地域や学校の実態及び生徒の特性,進路等に応じて,適切な科目を選定し,履修単位数を定める。
2 専門教科・科目について,すべての生徒に履修させる単位数は,25単位を下らないこと。
ただし,専門教科・科目の履修と同様の成果が期待できる場合は,5単位を限度として,そ
の専門教科・科目以外の科目を専門教科・科目の履修として認める。
3 基礎となる内容をもつ科目は低学年において,応用的,専門的,高度な内容をもつ科目は
高学年において履修させる。各教科・科目等について相互の関連を図り,発展的,系統的な
指導ができるようにする。
4 専門教科・科目の履修によって,必履修教科・科目の履修と同様の成果が期待できる場合は,その専門教科・科目の履修をもって必履修科目の履修の一部又は全部に替えることができる。「生活産業情報」を「社会と情報」などに,「公衆衛生」を「保健」に代替すること
が可能である。実施に当たっては,目標や内容,代替の範囲などについて十分な検討を行う
必要がある。
5 「総合的な学習の時間」の履修により「課題研究」の履修と同様の成果が期待できる場合,または,「課題研究」の履修をもって「総合的な学習の時間」の履修と同様の成果が期待できる場合は,それぞれの履修をもって「課題研究」または「総合的な学習の時間」履修の一
部又は全部に替えることができる。ただし,「総合的な学習の時間」の履修によって,「課題研究」の履修に替えた場合は,「課題研究」の履修そのものは行っていないので,専門学
科における専門教科・科目の必要単位数に含めることはできない。
6 実験・実習に配当する授業時数を十分に確保する。
7 生徒の実態に応じて,各分野における基礎的又は中核的な科目を重点的に選択し,その内容については基礎的・基本的な事項が確実に身に付くように配慮する。
8 地域や学校の実態,生徒の特性,進路等を考慮し,産業現場等における長期間の実習を取り入れるなどの就業体験を積極的に取り入れる。なお,就業体験をもって実習に替えることができる。
9 衣食住,保育,家庭看護や介護など,人間の生活に最も密接にかかわる生活産業に従事する者としての高い規範意識や倫理観を兼ね備え,かつ人間性豊かなスペシャリストを育成できるよう道徳教育との関連を図る。
家庭に関する各学科における指導計画作成に当たっての配慮事項は何か
1 「生活産業基礎」及び「課題研究」を原則としてすべての生徒に履修させる。科目の性格
やねらいなどから,「生活産業基礎」は低学年で,「課題研究」は高学年で履修させる。
2 家庭に関する科目に配当する総授業時数の10分の5以上を実験・実習に配当する。また,実験・実習に当たっては,10分の2以内をホームプロジェクトとして実施することができる
が,その場合は,指導計画に位置付けて計画的に実施しなければならない。
3 地域や産業界との連携・交流を通じた実践的な学習活動や就業体験を積極的に取り入れるとともに,社会人講師等を積極的に活用するなどの工夫に努める。地域や産業界との協力関係を確立するためには,学校の教育力を地域に還元する努力も重要である。
4 コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を図り,学習の効果を高める。
5 実験・実習を行うに当たっては,関連する法規等に従い,施設・設備や薬品等の安全管理
に配慮し,学習環境を整えるとともに,事故防止の指導を徹底し,安全と衛生に十分留意する。
実験・実習を行うに当たっての配慮事項は何か
改訂された指導要領では,「関連する法規等に従い」が追加された。校外に出て調査・研究・実習などを行う場合には,事故防止や安全管理に配慮し,指導計画を綿密に作成し,生徒が高校生としての自覚と責任をもって行動し,所期の目的が効果的に達成されるよう,生徒指導にも十分留意しなければならない。
「フードデザイン」の食育と「課題研究」の食育の違いは何か。
「フードデザイン」は,食育の推進を図る視点から従前の内容に食育の意義と食育推進活動を追加し,目標に「食育の推進に寄与する能力と態度を育てる」ことを明記した。
「(4)食育と食育推進活動」では,食育の意義や家庭や地域における食育推進活動を扱い,食育基本法や食育推進基本計画の趣旨を十分に理解し,家庭や地域において進んで食育の推進に寄与することをねらいとしている。
「課題研究」は,「(1)調査,研究,実験」に食品のルーツ,地域の食育活動,諸外国の食
育などの内容を,「(3)ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」に地域の子どもや高齢者
などを対象とした食育を推進する活動を追加した。「課題研究」は,「課題の解決を図る学習
を通して,専門的な知識と技術の深化,総合化を図るとともに,問題解決の能力や自発的,創造的な学習態度を育てる」ことを目標としている。
人間の生涯にわたる発達とは?
人間が生まれてから死ぬまでの間,身体的,精神的に変化し続け,各ライフステージの課題を達成しつつ発達するという生涯発達の考え方
人の一生という時間の経過を時間軸としてとらえるとともに,生活の営みに必要な金銭,生活時間,人間関係などの生活資源や,衣食住,保育,消費などの生活活動にかかわる事柄
を空間軸としてとらえ,各ライフステージの課題と関連付けて理解させることが重要
生活体験の減少(知識と体験が伴っていない)とは具体的に?
○生活にかかわる技術そのものが年々低下している。
包丁で皮を剥けない,針に糸を通せない,玉結びや玉留めができないなど
高校生段階であれば当然できると思われることができない
○安全衛生に関わる基本的な事項が身に付いていない。
コンロの近くに紙やポリ袋を置く,調理の前に野菜を洗うことを知らないなど
危険を予知して行動することや衛生面の管理ができない生徒が多くなっている
○出来上がりの予想を立てたり手順を考えたりして,合理的に作業をすること
が苦手である。
片付けや洗い物を同時に進めながら調理をすることができない
食材の分量を10倍,10分の1単位で間違っても気が付かない
中表で縫えばできあがりに表が出てくるという感覚がつかめない
○文章を読み取る力が欠如している。
料理のレシピを読み,できあがりまでをイメージする力が弱くなっている
衣服の部分名称や縫い方の名称などはていねいに説明しないと理解できない